放熱設計の担当者が知っておくと得をする、塗布工程の話

車載電子部品メーカーで、生産技術を15年ほど担当してきた三好です。
放熱材の塗布ラインも、何本か立ち上げてきました。

そのなかで何度も感じたのは、塗布工程の難しさの多くが、図面ができた時点でほぼ決まっているということです。
この記事では、放熱設計の担当者に知っておいてもらえると量産の立ち上げがぐっと楽になる話を、3つにしぼって書きます。

ギャップの公差は、そのまま塗布量の幅になる

液状のギャップフィラーは、決まった量を塗ってから相手部品を押し当てて広げる材料です。
すき間が狭ければはみ出し、広ければ届かない部分が残ります。

2液のギャップフィラーは、決められた比率で量り、混ぜながら吐き出して塗ります。
この工程を「混合吐出」と呼びます。

塗ってから押し当てるまでの流れは、放熱用ギャップフィラーを混合吐出するデモの紹介ページの動画で見るとイメージしやすいです。
2液型ディスペンサで高フィラー・高比重の樹脂を吐出し、協働ロボットが部品を組み付けるところまで確認できます。

カールスルーエ工科大学とBoschの研究者による放熱材の塗布経路に関する論文(2024年・プレプリント)は、組立後のすき間の公差幅が、すき間の高さそのものと同じくらいになる場合があると指摘しています。
すき間が最大のときは冷却面を十分に覆い、最小のときはねじ穴などへはみ出さない。
塗布側は、この両方を満たす塗り方を探すことになります。

公差を少し詰めてもらえるだけで、塗り方の選択肢はかなり広がります。
ねじ穴や周りの部品との距離に余裕があると、さらに助かります。

材料選びは、ラインの段取りまで決める

2液硬化型のギャップフィラーは、主剤と硬化剤を混ぜた時点から硬化が進みます。
例として、富士高分子工業の2液混合硬化タイプ「サーコン LG28A」の代表特性を見てみます。

項目代表値
ポットライフ(23℃)60分
硬化時間(厚さ6mm・90%硬化、23℃)12時間
硬化時間(厚さ6mm・90%硬化、100℃)60分

ポットライフは、混ぜた材料を使える時間の目安です。
ラインが止まったまま時間が過ぎれば、ミキサーの中で材料が固まってしまいます。

室温で硬化を待つのか、炉に通すのか。
この選び方ひとつで、仕掛品の置き場所やタクトが変わります。

もうひとつはリワークです。
三洋化成工業のウレタン放熱ギャップフィラーの技術記事(2023年)に載っている比較表では、ギャップフィラーのリワーク性は×、グリースとシートは〇とされています。
不良が出たときにどう直すのかは、設計の段階で決めておきたいところです。

設計から装置担当に渡してほしい情報

混合吐出の装置を選ぶときには、少なくとも次の情報が必要です。

  • 主剤と硬化剤それぞれの粘度と配合比率
  • 比重とフィラーの有無
  • ポットライフ
  • 1ワークあたりの吐出量とタクト

これらは、ディスペンサーメーカーの商品選定フォームで実際に聞かれる項目です。
金属粉や無機粉のフィラーはポンプを摩耗させることがあるため、フィラーの有無は特に早めに伝えてください。

まとめ

放熱性能は、材料の熱伝導率だけでは決まりません。
決まった量を決まった場所へ、毎回同じように塗れてはじめて、狙った性能が出ます。

  • ギャップの公差を詰めると、塗布量の幅が狭まる
  • ポットライフと硬化条件は、ラインの段取りを左右する
  • リワークの方法は、設計の段階で決めておく

図面を出す前に、一度だけでも生産技術の担当者と話してみてください。
それだけで、量産立ち上げの手戻りはかなり減ります。