「せっかく仕事を調整して平日に来たのに、なぜか毎ホールで待ち時間が発生する…」。
そんな経験をされたゴルファーは、決して少なくないのではないでしょうか。
こんにちは、ゴルフ場コンサルタントの佐藤輝昭と申します。
ゴルフ銀座と呼ばれる千葉県市原市で育ち、半世紀以上ゴルフと共に生きてきました。
ゴルフ場運営に20年携わった経験から言えるのは、平日でもゴルフ場が混雑するのには、明確な理由があるということです。
この記事では、単なるテクニックだけでなく、ゴルフというスポーツが持つ本来の“静けさ”や“風景の美しさ”を心ゆくまで味わうための、混雑を避けるゴルフ場選びのコツを7つ、私の視点からお伝えします。
この記事を読み終える頃には、あなたの次のゴルフ場選びの基準が、少し変わっているかもしれません。
なぜ平日のゴルフ場も混雑するのか?
かつて平日ゴルフといえば「空いている」のが当たり前でした。
しかし、近年はその常識が変わりつつあります。
まずは、その背景にある3つの理由を紐解いていきましょう。
シニア層・フリーランスゴルファーの増加
健康志向の高まりや、働き方の多様化は、ゴルフ界にも大きな影響を与えています。
時間に比較的余裕のあるアクティブなシニア層や、平日でもスケジュールを調整しやすいフリーランスの方々が、熱心なゴルファーとして増えているのです。
これにより、かつての平日の静けさは、少しずつ賑やかなものへと変わってきました。
格安プレー料金による予約集中
多くのゴルフ場にとって、平日の稼働率を上げることは経営上の重要な課題です。
そのため、土日祝日に比べてかなりお得な料金プランが平日に設定されています。
この価格メリットを求めてゴルファーが集中し、結果として混雑につながってしまうのです。
人気コース特有の「平日でも埋まる理由」
トーナメント開催実績のあるコースや、著名な設計家が手掛けたコースは、やはり人気が絶えません。
「一度はラウンドしてみたい」というゴルファーの憧れが、平日であっても予約を埋め尽くします。
こうしたコースは、ブランド力そのものが集客力となっているのです。
コツ①:アクセス至便すぎないコースを狙う
では、具体的にどうすれば混雑を避けられるのか。
一つ目のコツは、あえて「少しだけ不便な場所」を選ぶ勇気を持つことです。
高速インター直近は混みがち
高速道路のインターチェンジから5分、10分といったコースは、アクセスの良さから誰もが選びがちです。
当然、そこには多くのゴルファーが集中し、混雑のリスクも高まります。
特に首都圏近郊では、この傾向が顕著です。
一般道アクセスや“遠さ”が静けさを生むことも
インターから20分、30分と一般道を走るコースはどうでしょうか。
あるいは、そもそも最寄りのインターまで少し距離があるコース。
多くの人が敬遠しがちなこの“ひと手間”こそが、実は静かな一日を約束してくれるフィルターの役割を果たしてくれるのです。
少し早起きして、現地の風景を楽しみながら向かうドライブもまた、ゴルフの醍醐味と言えるでしょう。
コツ②:名門よりも「歴史ある中堅コース」に目を向ける
誰もが知る名門コースは素晴らしい体験を約束してくれますが、平日でも予約が困難なことが少なくありません。
そこで私が提案したいのが、視点を少しずらし、「知る人ぞ知る良いコース」に目を向けることです。
知る人ぞ知る老舗コースの魅力
派手さはないけれど、地元で長年愛されてきた老舗コースというものが各地に存在します。
こうしたコースは、クラブハウスの佇まいや、手入れの行き届いた木々に歴史の重みを感じさせます。
メンバーの方々が大切に守ってきた落ち着いた雰囲気の中で、ゆったりとプレーできる可能性が高いのです。
“過小評価されがちな名設計”に注目
有名設計家の陰に隠れがちですが、素晴らしい設計思想を持つ設計家は数多くいます。
例えば、富澤誠造氏や小林光昭氏など、地形を巧みに活かした戦略的なコースは、プレーヤーの挑戦意欲を掻き立てます。
こうしたコースは、ゴルフの本質を知るベテランに愛される傾向があり、過度な混雑とは無縁の、質の高いゴルフ体験ができる穴場となっていることが多いのです。
コツ③:火曜・水曜・木曜の午前を狙え
平日と一括りに言っても、曜日や時間帯によって混雑度には波があります。
その波を読み解くことが、快適なラウンドへの近道です。
平日の中でも差がある「狙い目の時間帯」
週末の疲れが残っていたり、週明けの仕事を片付けたりするゴルファーが多い月曜日。
そして、週末のゴルフに備えて仕事を調整したり、有給休暇を取得したりする人が増える金曜日。
この両日は、平日の中では比較的混みやすい傾向にあります。
狙い目は、週の真ん中にあたる火曜日・水曜日・木曜日です。
特に、朝一番のトップスタートに近い時間帯を選べば、前の組を気にすることなく、自分たちのペースでスムーズにプレーを進められるでしょう。
スタート時間で変わる1日の流れ
スタート時間をどう選ぶかで、その日のゴルフ体験は大きく変わります。
- 早朝スタート(7時台)
- メリット:前半は渋滞知らず。ハーフ2時間程度で回れることも。
- デメリット:早起きが必要。
- ピークタイム(8時~9時台)
- メリット:最も予約枠が多く、選びやすい。
- デメリット:最も混雑し、待ち時間が発生しやすい。
- 遅めのスタート(10時台以降)
- メリット:朝のピークを避けられる。ゆっくり準備できる。
- デメリット:日没の早い季節は、最終ホールが慌ただしくなる可能性も。
ご自身のライフスタイルに合わせて、最適な時間帯を見つけてみてください。
コツ④:1.5R推奨コースをあえて避ける
「せっかく来たのだから、追加でハーフを回りたい」。
その気持ちはよく分かりますが、この1.5R(追加ハーフ)プレーが、午後の混雑を生む大きな要因の一つなのです。
追加ハーフプレーが混雑を生む
18ホールを終えた正規のプレーヤーと、追加ハーフをプレーするゴルファーが、午後のスタートホールで合流します。
これにより、スタート渋滞が発生し、後半のプレー全体の流れが滞ってしまうのです。
特に、日没時間が早い秋冬シーズンは、この影響が顕著に現れます。
18H完結志向のコースを選ぶ理由
ウェブサイトや予約サイトで「1.5R保証」や「追加ハーフ格安」といったプランを積極的に打ち出しているコースは、午後に混雑する可能性が高いと判断できます。
逆に、そうしたプランを設けていない、あるいは推奨していないコースは、18ホールで完結するスムーズな流れを重視していると言えるでしょう。
サクッとラウンドを楽しみたい日は、あえてこうしたコースを選ぶのが賢明です。
コツ⑤:平日専用の優待プランを活用
平日ゴルフのメリットを最大限に享受するには、平日ならではのプランに目を向けることも大切です。
これは、単なる価格以上の価値をもたらしてくれます。
平日会員権/メンバー限定枠の活用法
もし、あなたが特定のコースを気に入っているのであれば、「平日会員」という選択肢は非常に有効です。
年会費はかかりますが、プレー料金が格段に安くなるだけでなく、メンバー専用の予約枠が確保されているため、混雑時でもスムーズに予約が取れます。
ゴルフを生活の一部として楽しむ、まさに大人の嗜みと言えるでしょう。
「地元密着型」コースの良心価格を見逃すな
地域住民向けの優待プランを用意している、地元密着型のゴルフ場も狙い目です。
こうしたコースは、地域との共存共栄を大切にしており、良心的な価格設定であることが多いです。
ウェブサイトをこまめにチェックしたり、直接電話で問い合わせてみたりすると、思わぬ発見があるかもしれません。
コツ⑥:グリーンコンディションの安定したコースを選ぶ
コースの善し悪しは、グリーンの状態で決まると言っても過言ではありません。
そして、このグリーンの状態は、コースの混雑度を測る一つのバロメーターにもなり得ます。
メンテナンスが行き届いている証=混雑しすぎていない
常にボールマークが少なく、滑らかな転がりを維持しているグリーン。
これは、コース管理者が愛情を込めてメンテナンスしている証拠です。
そして、こうした高い質を維持するためには、過度なプレーヤーの詰め込みはできません。
つまり、良いコンディションを保っているコースは、来場者数を適切にコントロールしている可能性が高いのです。
コース管理と混雑率の相関
プレーヤーのレビューサイトなどで、「グリーンが綺麗だった」「メンテナンスが良い」という声が多いコースを探してみてください。
そうしたコースは、目先の利益のために予約を詰め込むのではなく、長期的な視点でコースの価値を守ろうとしています。
結果として、それがプレーヤーにとっての快適さ、つまり「混雑の少なさ」に繋がっているのです。
コツ⑦:“物語のある風景”を持つコースへ
最後のコツは、少し情緒的なアプローチかもしれません。
しかし、ゴルフというスポーツの本質に触れる、最も重要な視点だと私は信じています。
それは、「風景に物語を感じられるか」という点です。
静寂と美観が混雑を忘れさせる
たとえ物理的に多少の待ち時間があったとしても、心を奪われるような美しい風景の中では、その時間は苦になりません。
朝靄の中に浮かび上がる松林。
池の水面に映る空の色。
バンカーの白い砂と、芝の緑が織りなすコントラスト。
そうした景色の一つひとつが、プレーの合間を豊かな時間に変えてくれます。
設計思想が生む「空間のゆとり」
私が敬愛する設計家・井上誠一氏は、自然の地形を活かし、各ホールを完全に独立させることで、プレーヤーに「貸し切り感」を味わわせる天才でした。
隣のホールから歓声が聞こえてくるような設計ではなく、まるで自分たちだけの庭でプレーしているかのような静寂とプライベート感。
こうした設計思想が生み出す「空間のゆとり」こそが、最高の贅沢ではないでしょうか。
混雑を避ける究極の方法は、こうした“風景に溶け込めるコース”を選ぶことなのかもしれません。
こうした思想は、何も往年の巨匠だけの専売特許ではありません。
例えば、デズモンド・ミュアヘッド設計のコースなども、その哲学が息づいています。
以前、あるゴルフメディアに寄稿されていたオリムピックナショナルの口コミレビューを興味深く拝見しましたが、やはりプレーヤーは、設計の妙や風景の美しさを敏感に感じ取るものだと再認識させられました。
まとめ
平日ゴルフを、単に「安いから」という理由だけで選ぶのは、少しもったいないかもしれません。
今回ご紹介した7つのコツを参考に、ゴルフ場選びの視点を少し変えてみてはいかがでしょうか。
- 1. アクセス至便すぎないコースを狙う
- 2. 名門よりも「歴史ある中堅コース」に目を向ける
- 3. 火曜・水曜・木曜の午前を狙う
- 4. 1.5R推奨コースをあえて避ける
- 5. 平日専用の優待プランを活用する
- 6. グリーンコンディションの安定したコースを選ぶ
- 7. “物語のある風景”を持つコースへ
これらのコツは、単に混雑を避けるためのテクニックではありません。
ゴルフというスポーツが本来持つ、自然との対話や、自分と向き合う静かな時間を取り戻すためのヒントです。
次のラウンドでは、ぜひ“風景を借りて、物語を植える場所”としてのゴルフ場を選んでみてください。
きっと、慌ただしさとは無縁の、心満たされる一日があなたを待っているはずです。